オセロー

今年８７冊目。

オセロー (新潮文庫)

いよいよ、おれがお役にたつ時が来たのさ。財布に金を入れておくのだぞ。さあ、戦争を追いかけたり、附けひげで変装してな。いいか、財布に金を入れておけ。考えてもみろ、デズデモーナがいつまでムーア人に惚れていられるものか――財布に金を入れておけ――男の方だって同じことさ。熱しやすきはなんとやら、見ているがいい、それだけ逆にすぐひびも入る――金だ、財布に金を入れておくのだぞ。ムーア人というやつは気が変わりやすいからな――金を財布一杯つめこんでおけよ。同じ食いものでも、今ロカストの実のようにうまいと言っていたかと思うと、すぐその口の下から、今度はコロシント瓜のように苦いと言いだすやつさ。女は気が変って若いのがほしくなるのに決っている。奴の体に食い飽きれば、始めに過ちありと気がつこうというものだ。だから、財布に金を入れておくのだぞ。(p.39)

いいね、この悪事をそそのかしている感。妙な迫力です。